hoshi mitsuki個展「そこにある」を、鑑賞者の皆様への新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、開催日程を、2021年4月10日(土)から2021年4月18日(日)の期間に延期致します。
作品を作ること、それを鑑賞して頂くことで何かの力になるかもしれないと思います。
それでも、今の状況を踏まえ、様々なことを考えると、展示開催よりも大切なことが表立ってきていることを感じています。
鑑賞してくださる方にも心のゆとりと安心感を持って、ステッチの抑揚や、空間全体で感じることを体感して頂きたいという気持ちがあります。
ご鑑賞を予定して下さっていた皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ぜひとも来年の個展開催時にご鑑賞賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
hoshi mitsuki
Galerie de RIVIERE
そこにある
目に見えない熱のかたまりが、そこにある。
ぎゅっと折り曲げた指の関節の間。
踏みしめた足の裏と、伝わる床の上。
視線に触れてほてる肌の表面。
ぴったりと重なるわきの下。
何かに向かって手を伸ばす時の二の腕に溜まる熱。
漂う、誰のものでもない熱。
走る時、眠る時、何でもない時、
それは小さくて大きなうねりを持ってそこにいる。
曖昧で確かな記憶の中に見る、熱の夢。
夢の終わりはまだ先のようで、私は少しだけ安心する。
hoshi mitsuki
“熱” はとても不確かで、でもそこに確実にあって嘘がない。
でも見えないから、私はいつものようにはうまく言葉が出てこない。
信じたい気持ちと、信じ切れない気持ちが交互にやってきて、ゆっくりと床を見つめる。
そこに曖昧ではあるけれど何かを感じて、また縫い始める。
見えない存在は、“気配” となって私の横とも、遠くともつかないところにいる。
分からない答えの途中に、短い何かを感じる。
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昨年冬、金柑画廊で開催した「そこにある」、
漠然とした “熱” という存在に名前も説明もうまくつけられないまま、
溜まったドローイングの中から糸に起こす熱を選ぶ。
いつもならスルスルと出てくる作品に対する言葉は難解になり、少し戸惑った。
私の中にも確信があるのにうまく言えない。
メモを重ねても、はっきりしたことはわからなかった。
分からない、見てみたい、だから言葉にする前に縫うのかもしれない。
金柑画廊での個展中、漠然と感じるその熱に “気配” と名付けてくれた人がいた。
“熱”は“気配” と名付けられ、見えない“存在”に変化した。
とても嬉しかったのを覚えている。
気配を探る旅を、またできることがとても嬉しい。
怖くもあるけれど嬉しい。
リヴィエールの空間だからこそ、そこにあることができる気配を
落としていけたらと思う。
刺繍は手間のかかる作業です。
同じ線を表現するのでも、ドローイングで描かれる線と刺繍される線とでは、かかる時間が随分と違ってくる。
hoshi mitsuki は、ドローイングから現れてきたものを刺繍でうつしていく。
ドローイングを原画としてではなく、イメージとして捉えながら刺繍を仕上げていくようになったのも、刺繍をしている時間が彼女にとって大切な思考をする時間であるからだろうと想像できます。
冷たい針が彼女の手の中で動くたびに、布と擦れながら熱を帯びて、彼女の思考を通過しながら目の前に現れてくる。
表現が行為と絡み合って、作品が出来上がっていく。
彼女のテーマが”熱”であることに、私は勝手に納得しながら、彼女の作品を楽しみに待つのです。
金柑画廊|太田京子
Galerie de RIVIEREはhoshi mitsuki個展「そこにある」を開催いたします。
hoshi mitsuki氏と、彼女の作品に出会ったのは、東京・目黒にある金柑画廊の太田京子氏にご紹介いただいたことがきっかけです。
2018年のオープンから、多くの作家に展示を開催頂きましたが、その中に数名、過去に金柑画廊で個展を開催されたことのある作家がいらっしゃり、中には太田氏にDMや物販の制作にお力添えを頂いた展示もありました。
そのようなご縁もあり、2020年4月の展示にhoshi氏をご紹介頂きました。
今展示は、2019年11月に金柑画廊で開催された個展の巡回展であり、Galerie de RIVIEREにとって初めての、平面作品ではなく、「刺繍」という立体的な作品の展示です。
今回は、ドローイングを描き、そのドローイングから起こされた刺繍作品を中心に展示して頂きます。
学生時代、絵を紙以外の何かに起こしたいと思い、彼女が選んだ手法が「刺繍」でした。
当初はドローイングを原画とし、忠実に刺繍を起こしていたものが、最近では「原画」というよりも、「イメージ」や「コンセプト」を自由に放つ行為となってきているといいます。
作品はドローイングに由来する柔らかなタッチから、「熱」という抽象的な題材を、糸という物理的な流れとともに、ステッチの起伏や支持体の素材感によって表現されています。
作品の設営される状況や状態、鑑賞する視点によっても印象が変わることは、平面的なドローイングから立体的な刺繍に起こされることによって得た昇華と言えるのではないでしょうか。
ドローイングをすること、そこから刺繍を起こすことについてhoshi氏は、
「ドローイングで自分の頭の中のものを自由にし、刺繍に起こすことで表情が変わる。
紙の上では見えなかった表情、情景が浮かびあがり、また何かしらの熱が加わる。
「絵」のためだった刺繍が、布に起こすことによって表情を変える。
最初は糸に起こすことがひたすら楽しくて続けていたことが、段々と紙の上とは違う表情に気づき、
ステッチの寄りや生まれる流れをみて、そこに集まる熱量みたいなものを感じるようになりました。」と教えてくださいました。
hoshi氏が感じている「熱」たちを、鑑賞を通じて皆様に感じていただけると幸いです。
ぜひこの機会にご高覧下さい。
展示への招待を彼女は「贅沢な乗り継ぎ切符をもらったような気持ち」と表現してくださいました。
今展示が、彼女と作品の更なる旅へのきっかけになることを願っております。
hoshi mitsuki氏の個展を開催出来ることを光栄に思うと共に、これからも彼女の作家活動を支援して参ります。
Galerie de RIVIEREは招待展示を通じて、ギャラリーとして様々な表現活動を行う作家の支援を行って参ります。
リヴィエール
1990年生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。
2012年より刺繍作品の制作を始める。
絵を描き、糸にのせてまた別の表情を生み出す。
見過ごしがちな日常に目を向けた作品たちはアートから日常使いの小物まで多種にわたる。
HP https://www.hoshimitsuki.com/
〒564-0062 大阪府吹田市垂水町3丁目1-17 リヴィエール2F
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